山芳の生産者限定ポテトチップス うすしお味を食べる
「叱る」と「褒める」というのは同意語だ。情熱や愛情が無いと、叱っても、ただ怒られているというとらえ方をする(野村克也:元野球選手・監督)
日本で生産される代表的なじゃがいもの品種
じゃがいもの代表的な品種としては、男爵、メークイン、インカのひとみ、グラウンドペチカ、トヨシロ、ニシユタカ、シャドークイーンなどがある。ポテトチップスの原料としては、トヨシロのほか、スノーデンやきたひめがあるが、トヨシロがポテチ用加工じゃがいもの主力である。これらの品種は、くぼみが少なくて皮がむきやすい、油で揚げたときに焦げにくい、水分が少ないので薄くスライスしやすいという特徴を持っている。それゆえにポテチ向けの加工用に向いているのである。
さて、今回は山芳の「生産者限定ポテトチップス うすしお味」である。その名のとおりじゃがいもにこだわったポテチである。
2017年9月から10月に、北海道本別で収穫したじゃがいもを使用した、ポテトチップスです。化学調味料不使用で素材の味がひきたつ、しお味を是非お楽しみください
とのこと。
山芳とは、わさビーフで有名なあの山芳である。素材の味を引き立てるなんてことをまったく考えていないように見える、あの山芳である。今年彼らが世に問うたパインアメ味は一部の間で旋風を巻き起こした(と私は勝手に想像する)。山芳というのはパインアメ味のような変わった味を世に送り出すメーカーであり、カルビーや湖池屋といったポテチ界の巨頭とは一風変わった独自路線を邁進している。ベンチャー企業っぽいトガリっぷりだが、創業は昭和28年と戦後10年も経過していない時代に創業された立派な老舗企業である。
今回食べたポテチは純粋たる塩味。まったく山芳らしくない。生産者限定、じゃがいもは国産トヨシロというアピールもまったく山芳らしくない。一瞬、同姓同名を疑ったが、製造者は「山芳製菓株式会社」であり、住所は東京都板橋区常盤台1−52−3、まさしくわさビーフの山芳製菓の本社所在地だ。
やんちゃ坊主がある日突然優等生になったような、どう扱ってよいかわからない不思議な扱いづらさがある。無論、山芳的ないつものポテチだって生産者にもじゃがいもの品質にもこだわっているだろうが、突如として優等生然とした山芳に私はいささかの戸惑いを覚えた。山芳にとってはとんだ言いがかりに違いないのだが。
生産者限定ポテチを食べる
で、お味なのだが、しお味がきっちり効いてとても美味しいのだが、ポテチになってしまうと生産者にこだわったとか国産トヨシロにしました、と言われてもなかなかわからない。なんせ、あの薄さでしかも油で揚げてあるのだから。生や蒸したじゃがいもを丸ごとかじりつけばその違いに気づくというものだが、ポテチになってしまえば普段との違いを感じ取るのはそもそもミッションインポッシブルなんじゃなかろうか。第一、比べようにも通常の山芳のラインナップに塩味なんてないではないか。
それに、だ。
冒頭で書いたとおり、ポテチ用じゃがいもの主力はトヨシロであり、 それらのほとんどは国内で調達される。輸入はあくまで「不作時の調整用」。輸入ものは不良率が高く、輸送費を含めるとコスト高なのだ。
そんなわけで、敢えて書かずとも日本のポテチの多くは国産のトヨシロが使われている確率が高い。山芳が生産者を限定しているかどうかはわからないが、カルビーは契約生産者のじゃがいもを使っているから、その意味では生産者は限定されている。しかも、契約生産者に最適な収穫時期を教えたりする「フィールドマン」と呼ばれる人々がいて、じゃがいもの品質を厳しくチェックしているという。山芳のことはよく知らないものの、おそらく山芳もしっかりとした品質管理をしていると容易に想像できる。
とすれば、別にこの生産者限定のポテチでなくても普段から品質管理が徹底された国産じゃがいもが使用されていると思われる。もしかしたら通常よりもさらにこだわっているのかもしれない。しかし、30点が90点になったのなら大きな違いだろうが、もともと80点以上の高水準のポテチを食べ慣れていたら、それが90点になっても相対的な差異は小さく、こだわりプラスαの部分に気づくのは相当に至難の技だ。考えてもみればなんとも贅沢な話である。常日頃からよく出来るものだから、周りはそれに慣れてしまい、いつもよりちょっとよく出来たくらいでは、今更驚かない。正しくいいものはいい、悪いものは悪いと言える人間としての基本を私は忘れていたのではないか。
そう、このポテチは美味いのである。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
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