フラ印のハワイアンサワークリーム味を食べる
プリングルズのサワークリーム&オニオン味をめぐる疑惑
2、3年前からプリングルズのサワークリーム&オニオン味(以下、サワークリーム味)をめぐって一つの疑惑が持ち上がっている。すなわち、サワークリーム味がまずくなっているのではないか、という疑惑である。疑惑というか、ほぼほぼ満場一致で「まずくなっている」との結論に達している。私もそう思っている。
プリングルズといえばサワークリーム味、サワークリーム味といえばプリングルズ、と言っても差し支えないほど、サワークリーム味といえばプリングルズであったし、日本にサワークリーム味を広めたのは間違いなくプリングルズだ。私個人は塩味が好きなので、今ではまず見かけない赤いパッケージの「オリジナル」が好きだったが、私以外でプリングルズでオリジナルが一番好き、という人間を私は知らない。それくらいプリングルズのシンボル的な味だったのである。サワークリーム味は。
プリングルズを開発したP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)が食品事業から撤退し、ケロッグが商標権を取得したこと(2012年)、およびケロッグが2015年にマレーシアに新工場を設立し、アジア向けの大きさとフレーバーで生産を開始したこと*1がサワークリーム味の劣化をもたらした要因であることは間違いない。
何が変わったって、一言でいえば、大きさが小さくなり、食感が軟弱になり、何よりサワークリームのパウダーが減ったことである。一言で言うはずが、一言では収まらない。要するにすべてが悪くなった、ということである。味覚は人それぞれながら、本件についてはほぼすべての人がサワークリーム味は劣化した、と答えるに違いない。
ケロッグは消費者の嗜好を頭の中だけで考えてしまったのではないか。たしかにアジア人はアメリカ人よりも体格は小さいし、概してあっさりした味を好む。というか、アメリカ的な濃いにもかかわらずどこか短調な味付けを好まない。甘すぎ!とか色がどぎつい!とか大きい!とかは、日本人の口から発せられるアメリカのお菓子に対する評価としておなじみである。だから、サイズを小さくしたり、味の濃さを抑えたりするのは、まあ、アジア向けの商品開発としてはハズレではないように思う。
自分だってアメリカ人から、日本人はどんな味を好むんだい?アメリカ的な味は受け入れられるかい?って聞かれたら、日本人はあっさりとした味付けや素材を味を生かす味付けを好み、量はそんなには食べない、と答えるに違いないのだ。一般的な傾向としてなら、この答えは正しいはずだ。だから、頭の中で描く日本人の嗜好のイメージであればケロッグが採用した方向性は理に適っている。
だが、プリングルズのサワークリーム味に限っては当てはまらなかったようだ。そもそも小さくなって、しかも値段も同じなら喜ぶ人はいないだろう。それに加えてサワークリーム味はこれでもか!と振りかけられた大量のパウダーが実はよかったのだ。いや、変わるまではわれわれとてそれを意識してはいなかっただろう。
しかし、人間というのは悲しいもので失ってからその大切さに気づくのである。われわれはあの大量のパウダーがよかったのだ。ガツンっとくるあの大量のパウダーが好きだったのだ。
なぜにサワークリーム味に限っては味が濃くて大量のパウダーがよかったのかはわからない。普通は味が濃くて敬遠されても不思議はない。われわれ日本人に味覚を基準にすれば。ワイドショーに出ている鼻持ちならないコメンテーターであれば日本人の味覚が欧米化したせいだ、と短絡的に答えるだろうが、私も以前のプリングルズのサワークリーム味が好きだったけれども、じゃあ、料理全般としてアメリカ的なものが好きかといえばそんなことはない。ときどき仕事でアメリカに行くが、やはり当地の料理はイマイチ受け付けないものがあるし、日本に帰国すれば、やっぱり和食は最高だーと思う。
要因の一つはサワークリーム味が日本になかったからではないか。少なくともプリングルズが広めるまでは馴染みのない味だった。日本でもよくある味であれば、意識せずともわれわれは味を比較する。比較すれば、日本的な味付けに軍配を上げる人がいても不思議はない。しかし、日本にない味であれば、プリングルズの味付けが基準となろう。
もちろん、それでも謎は残る。日本にない味であればなんでも海外の味付けが日本人に受け入れられるとは限らない。だから、日本になかった味だからこそ濃いめの味付けが受け入れられたのはありうるにしても、それだけでは説明ができない。時代背景を含めたさらなる考証が必要そうだ。
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フラ印のハワイアンサワークリーム味を食べる
と、長々とプリングルズのサワークリーム味をめぐって書いてしまったが、本題は今回食べたフラ印のハワイアンサワークリーム味である。フラ印の特に「カイソルト味」は私が最も愛するポテチの一つである。私のみならず世間的な評価も高い逸品だ。
そのフラ印のサワークリーム味である。カイソルトが好きすぎて、ときには違う味にしようと思いながら、結局カイソルト味を選択してしまうのだが、今回は意を決してサワークリーム味をチョイス。
原材料は、こちら。
ジャガイモ、植物油、食塩、デキストリン、オニオンパウダー、脱脂粉乳、ホエイパウダー、サワークリームパウダー、チーズパウダー、パセリフレーク、ガーリックパウダー、酵母エキスパウダー、調味料(アミノ酸等)、香料(卵・オレンジ・大豆を含む)、酸味料、酸化防止剤(ビタミンC)
100グラムあたり510キロカロリー。
味の劣化にもかかわらずサワークリーム味といえばプリングルズという構図は依然として存在するように思う。が、以前は他社がサワークリーム味を出してもプリングルズの牙城を崩すことは不可能に思われたが、敵失により他社もサワークリーム味の王座を狙えるサワークリーム味戦国時代に世の中は突入している、ようなしていないような。
それはともかく、プリングルズのサワークリーム味一択とはいえない以上、他社のサワークリーム味も積極的にトライすべきである。
で、フラ印のハワイアンサワークリーム味だが、これはなかなかイケる。サワークリーム味でまずいポテチに出会ったことはないが(劣化したとはいえプリングルズのサワークリーム味がまずいわけではない。以前が美味しすぎたがゆえの悲劇なのだ)、フラ印のハワイアンサワークリーム味も例に漏れず美味しい。
サワークリーム党であれば、もっとパウダーをかけろ、と言うだろう。サワークリーム系としては控えめな味付けである。しかし、ケトル製法によって厚く堅揚げされているぶんポテチとして食べ応えがあって、控えめな味付けを補っているように私個人としては思う。これはこれで一つの方向性としてありだ。
ただ、私はフラ印はカイソルトが好きすぎるので、フラ印買うならやっぱりカイソルトだなーと思うのである。カイソルトの完成度は高い。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
そのほか、食べたサワークリーム味はこちら。
ちなみにポテチ入門書を書いたので、ご関心のある方は是非。
表紙とかもっとこだわるべきだったのでしょうが、ポテチについて最も体系的に整理された本だと自負しています(Kindle Unlimitedならタダです)。