もちやのポテトチップを食べる
ナチュラルローソンで「もちやのポテトチップ」を見つけた。
白地に赤い円、すなわち日の丸を背景に「もちやのポテトチップ オイシイ塩アジ」と白抜き文字で書かれている。シンプルなパッケージがおしゃれ。無印良品的なシンプルな美。ポテチのパッケージってわりにカラフルだからかえって目立つ。それも狙ってこのデザインにしたのかな?
赤い円の下に「JAPANESE POTATO CHIP」とある。日本を代表しようだなんてなかなか剛胆ではないか。チップ(ス)、CHIP(S)と複数形しないのはなぜかわからないが、それはそれで逆に日本っぽいといえなくもない。
しかし、何より「もちや」のポテチとはこれいかに。
コメチップスならわからんでもないが、原材料は、じゃがいも、植物油脂、うるち米(米国産)、岩塩とある。破砕してじゃがいもと混ぜて揚げるのだろうか。
おもしろそう。これは買わずにはいられない。フラ印のカイソルト味がすでに入れられた買い物かごにもちやのポテトチップが投入された。
開封すると、分厚めのチップスがお出まし。堅あげポテチのようでもあるが、どちらかといえば中華料理や居酒屋で出てくるえびせんといったほうがしっくりくるか。通常のポテチとは一線を画する見た目である。
そんでもって食べてみると、これがなかなか美味しいのだ。
これいいじゃん。
食感はやはりえびせんに近い。
堅あげポテチほどの硬度はない。えびせんよりは硬いんだけど、どちらにより近いか、といえばえびせんに近い。でも、じゃがいもが入っているからだろうか、えびせんよりもだいぶ食べ応えがある。じゃがいもwithコメ、これは腹にたまらないわけはない。アメリカだとポテチは主食的に料理に添えられていることもあるが、もちやのポテチのほうがその役割をしっかり果たしそうだ。
塩味がきりっと効いている。しょっぱいと感じる人もいるだろうし、自分も後で喉が乾くかもしれないとは思ったが、この切れ味のいい塩の塩梅は好きだ。
40グラムという内容量もいい。ちょっとつまみたい、でも通常のコンビニサイズ(85グラム)のポテチを食べるほどではない、というときは特に。いや、コンビニサイズを買ったって一度に全部食べなければいい話なんだが、やっぱり美味しくてついつい手が伸びちゃって、あっという間に完食って感じになっちゃうから、だったら40グラム食べきりサイズのほうが私のような食べ過ぎちゃう系の大人にはちょうどいい。
このポテチを作ったのは、「株式会社三真」さんと「株式会社もちや」さん。
三真ウェブサイトのトップページがかわいい。いろんな種類の柿の種がならんでて。トップページが示す通り、米菓の製造販売を生業とする会社。ウェブサイトをみると、「しっとりハムカツせんべい」とか「牛スジカレー」とか、興味をそそるラインナップが揃う。遊び心ある会社なのかしらん。さながら米菓界の山芳か。オンラインショップで買えるのがうれしい。私はポテチだけが好きなのではない。あらゆるお菓子が好きである。甘いのもしょっぱいのも、和風も洋風も。だから、早速注文した。ハムカツせんべいってどんな味なんだ?もちやのポテチよりもさらに予想できない味。
他方、もちやはコメ関連の食料品の製造販売で、もともとはその名の通りお餅の製造販売だったのだが、時代に合わせていろんなものを作るようになったようだ。こちらは実直さが伝わる堅いウェブサイトのつくり。近い業界でもいろんなタイプの会社があって、それがおもしろい。
もちやのポテトチップは美味しかった。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
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カルビーの堅あげポテト梅味を食べる
今日の東京は寒い。雪が降った昨日ほどじゃないにせよ、寒い。明日は小雪がちらつくかもしれないと天気予報が言う。先日アメリカに出張に行ったがそこでも雪に降られた。数年前に海外出張に行った時は平年以上の気温でコートが不要になるくらいの暖かさだったのに、最近は寒波に見舞われることが多い。雨男ならぬ雪男になったようだ。昨年夏の異常な暑さはさすがに勘弁願いたいが、基本的に寒いよりは暑いほうが好きである。早く暖かくなってほしい。
とはいえ、暦の上ではもう春。河津桜はもう咲き始めたというが、2月は梅の季節だ。梅の季節といえば、そう、梅味のポテチだ。
今回食べたのはカルビーの堅あげポテト「梅味」。紀州産梅100%使用。なお、農林水産省近畿農政局によると2017年の日本梅収穫量の62%は和歌山で取れたもの*1。
「南高梅」で有名な和歌山だけにさすがに生産量。私は長い間、南高梅は「なんこうばい」と読むのかと思っていたが、正式には「なんこううめ」と読む。この誤用、私だけではないだろう。実際、「なんこうばい」と呼ばれることもしばしばで、私のMacBookでは「なんこうばい」とタイプしてもちゃんと(?)「南高梅」と変換される。
梅味のポテチは美味しくて、好きなフレーバーの一つだが、この堅あげポテト梅味も例に漏れず美味しい。しょっぱさと油を酸味が中和させる。堅あげポテトは分厚くて食べ応えがいいのだが、梅の酸味が重厚さに爽やかさをプラスさせている。
かつおぶしパウダーとかつおぶしエキスパウダーがいい味を出している。酸味ポテチの美味しさは日本人に限らず世界中の人々が認識するところで、「ソルト&ビネガー」は海外ポテチの定番フレーバーだが、酸味+旨味というのは日本のポテチならではだと思う。この梅味というか、かつお梅味が好きなんだよね。
かつお梅考えた人、ほんと天才だと思う。
ポテチをすっかり食べ終え、このブログを書いていて、かつお梅という単語をタイプしたら脳内にかつお梅が再生されて、口の中に唾液が滲み出てくる。「ソルト&ビネガー」ではこうはいかない。かつお梅、ないし梅干し、だからこそ体が反応するのだ。一度梅干しを食べたら、外国人でもこの反応が発生するのだろうか。
(堅あげポテト梅味の原材料は↓のとおり)
じゃがいも
植物油
梅肉パウダー
食塩
砂糖
還元水あめ
かつおぶしパウダー
酵母エキスパウダー
香味油
かつおぶしエキスパウダー
調味料(アミノ酸等)
酸味料
香料
ベニコウジ色素
酸化防止剤(ビタミンC)
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
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北海道フェアでかみさんが買ってくれた農協ポテチ「ふらのっち」のコンソメ味を食べる
近所のスーパーで北海道フェアをやっていた。そこでかみさんがポテチを買ってきてくれた。なんと愛しき妻であることよ。
かみさんが買ってきたのは農協チップス「ふらのっち」。
はじめて見るポテチである。
販売者は株式会社モントワール。製造元はふらの農業協同組合。世の中にはたくさんのポテチがあって自分が食したことがあるのはそのごく一部。そうは言ってもJAのポテチって見たことなかったなぁ。はじめは販売元だと思っていた。ポテチってジャガイモをスライスして油で揚げるだけのとっても単純なお菓子なんだけど、製造メーカーは意外に少ない。原料のジャガイモは生産時期が限られているから、通年生産するには貯蔵施設を持たなければならないし、管理が悪ければ腐ってしまって使い物にならない。糖度が高いジャガイモは美味しいけれど焦げやすい。自宅でも作れる単純なお菓子だけど、商品として安定したクオリティのものを作ろうとすると話はそう単純でなくなるのだ。
だから製造メーカーは意外に少ない。カルビー、湖池屋、山芳、菊水堂、松浦食品、フクハク、深川油脂工業、ヤマザキビスケットあたりが主要メーカー。シェアでいえば、カルビーと湖池屋で90%を超える。それでも日本各地に魅力的なご当地ポテチがあふれるのは、それらのポテチメーカーがOEMで委託製造をしているからだ。
そんなわけで、はじめはOEMだと思ったふらのっちだが、製造所は「ふらの農業協同組合」と書いてある。すごいなぁ、農協がポテチをちゃんと作っているんだなあ。
かみさんが買ってくれたのはコンソメ味。塩、のり塩に並ぶポテチフレーバー三巨頭の一角。
原材料はこんなところ。
ばれいしょ、植物油、砂糖、香辛料、肉エキスパウダー、たんぱく加水分解物、食塩、オリゴ糖、香味油、調味料(アミノ酸等)、酸味料、パプリカ色素、甘味料、香料、香辛料抽出物。
味は濃いめだ。ローカルなポテチだと味が薄いこともあるが、これはなかなか濃いめ。惜しみないパウダー量。ローカルなマイナーポテチだと侮っていたが、贅沢なパウダー使用ではないか。美味しい。これは心して食べなければ。
居住まいを正して食べ進める。厚みがあるポテチである。カルビーと湖池屋を比べると湖池屋のほうが厚い。その湖池屋よりも厚い。湖池屋の「じゃがいも心地」よりは薄い。でも、一般的なポテチとすれば厚めなほう。この厚みが贅沢感に一役買っている。
味もしっかりしているし、厚みと歯応えもよし。クオリティが高いポテチだ。
さて、ネットをサーフィンしていると、ふらのっちを取材したおもしろい記事を見つけた。
記事によると、ふらのっちは湖池屋とのコラボで誕生したそうで、ポテチが少し厚めなのは湖池屋の薫陶によるものか。でも、湖池屋よりもさらに厚みはある。厚いほうがジャガイモ食べた感があるからこの厚みにしたのかな。
「ふらのッち」の誕生は、2010年。富良野のじゃがいものおいしさをうまく表現できて、気軽に味わってもらえる加工品はないだろうか。そう考えた同JAが、南富良野町に工場を建設。大手スナックメーカー「湖池屋」と業務提携し、夢のコラボで商品化が実現しました。
「じゃがいものおいしさをうまく表現できて、気軽に味わってもらえる加工品はないだろうか」というコメントが何ともいいではないか。ポテチを含むスナック菓子って不健康とか、だらしない人が食べてる(カウチポテト)的な、っていうマイナスイメージがつきまとうんだけど、一番気軽に食べられるジャガイモ製品なんですよね。うまく使えば地域の食材のPRや産業振興に役立つわけ。
もちろん食べ過ぎはよくない。最大手のカルビーだって食べ過ぎはあかんと説いて回っているのだ。
政府の規制改革推進会議(前身の諸会議を含めて)ではJAの改革が盛んに促されているし、たしかに改革が必要な部分もあるとは思うが、こういう熱意をもってポテチ作りに取り組むJAがあるということを知ると、JAもまだまだ農家の所得拡大・地域振興に果たす役割はあるんだな、と応援したくなる。
そう思うのは兎にも角にもふらのっちが美味しいからだ。こういう商品どんどん作って欲しいなー。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
↑ベランダに来たヒヨドリを見つめる
ちなみにポテチ入門書を書いたので、ご関心のある方は是非。
表紙とかもっとこだわるべきだったのでしょうが、ポテチについて最も体系的に整理された本だと自負しています(Kindle Unlimitedならタダです)。
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プリングルズのマレーシア産サワークリームオニオン味とアメリカ産サワークリームオニオン味を食べる
デパートにてマレーシア産とアメリカ産の両方を発見
3、4年前からプリングルズの質が落ちた、すなわち不味くなったんじゃないか、という噂が界隈の一部を賑わしている。私も味が落ちたような、落ちたとまでは言わずとも、なんか変わったなーとは思っていた。
で、その理由は、プリングルズを開発したP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)が食品事業から撤退し、ケロッグが商標権を取得したこと(2012年)、およびケロッグが2015年にマレーシアに新工場を設立し、アジア向けの大きさとフレーバーで生産を開始したことにあるのはほぼ間違いない。
ただ、こういうのって想い出補正があるから、食べ比べたら実はそんなに変わらないんじゃないか、という思いも心のどこかにあった。結局のところ噂の真偽は食べ比べてみなければわからないのである。
その食べ比べが今日(1月20日)実現した。外出先のデパートのお菓子売り場を覗いたら、なんとマレーシア産とアメリカ産の両方が置いてあったのである。しかも同じ棚に。成城石井とかに行けばアメリカ産サワークリーム味を労せず見つけることはできただろうが、そこは生来のなまけものゆえ、なんか一遍に買えないとイヤっていうか、要するにめんどくさくてそこまでしていなかった。なまけものであっても同じコーナーで数センチ移動するだけで済むならさすがに手を伸ばす。デパートのファインプレーによりサワークリームオニオン味の東西対決がついに実現したのである。
プリングルズ東西比較
↑内容量はマレーシア産が110グラム、アメリカ産が158グラム。だからアメリカ産のほうがだいぶでかい。
↑面積はアメリカ産のほうが大きい。
↑厚みはマレーシア産のほうが厚い。この厚みが実は問題だと思う。
↓成分・原材料比較(いずれもパッケージに基づく。アメリカ産はジャガイモってなっているけど、ポテトフレークとするほうが正しいだろう)
項目 | アメリカ | マレーシア |
---|---|---|
単位(グラム) | 100 | 100 |
タンパク質(グラム) | 3.6 | 5.8 |
脂質(グラム) | 32.1 | 27.3 |
炭水化物(グラム) | 53.6 | 62.4 |
食塩相当量(グラム) | 1.6 | 0.7〜2.8 |
原材料名 | ジャガイモ | ポテトフレーク |
植物油脂 | 植物油 | |
とうもろこし粉 | ||
小麦でん粉 | 小麦でん粉 | |
マルトデキストリン | マルトデキストリン | |
米粉 | ||
食塩 | 食塩 | |
ホエイ | ホエイパウダー | |
ぶどう糖 | ぶどう糖 | |
オニオンパウダー | オニオンパウダー | |
脱脂乳 | 脱脂粉乳 | |
サワークリーム | サワークリームパウダー | |
発酵脱脂乳 | 発酵脱脂乳 | |
バターミルク | ||
乳等を主要原料とする食品 | ||
転化糖 | ||
酵母エキス/調味料(アミノ酸等) | 酵母エキス | |
香料 | ||
クエン酸 | ||
乳酸 | ||
カゼインNa | ||
リンゴ酸 |
やはりアメリカ産のほうが美味かった
結論から言おう。アメリカ産のほうが美味い。
そして当然と言うべきか、アメリカ産のほうが「そうそう、これこれ、プリングルズってこういう感じだった」というプリングルズ感がある。
同じプリングルズにもかかわらず、想像以上にけっこう違う出来上がりである。
まずもってポテチの面積と厚みが違う。
マレーシア産のほうが面積が小さいことは比較するまでもなくわかっていたが、厚さも違う。マレーシア産のほうが厚い。厚みの違いが食感の違いを生んでいて、それもけっこうな違いなのである。アメリカ産のほうが薄くてパリッとくだける感じ。この歯ごたえない感じがプリングルズらしさ。厚いとチップスターっぽくなってしまって、それはそれでいいんだけど、プリングルズではない!となってしまうのだ。だったらチップスターにするよってなっちゃう。
そういえば、マレーシアの代表的ポテチであるMAMEE社のMister Potatoも少し厚めだったような。マレーシア人は少し厚めのポテチが好きなのかしらん。それかOEMで同じ会社が作っていたりして。
そんでもって味もアメリカ産のほうがいい。
フレーバーの粉感は、想い出通りアメリカ産のほうが強い。この粉感がわれわれがプリングルズ、特にサワークリームオニオン味に求めていたことだ。
これこそ正しいプリングルズの姿なり。
ただ意外だったのは、じゃあ、アメリカ産のほうが味が濃いのかって言われると、そうでもないのだ。むしろマレーシア産のほうが濃く感じる(もちろん粉の付き方が違うから単純な比較は難しいのだが)。
噛みしめてみても、マレーシア産のほうがいつまでもフレーバーが残る気がする。アメリカ産のほうがすうっとフレーバーが消えていく。味はマレーシア産のほうが長持ち。粉のつき方にもよるが、マレーシア産のあとにアメリカ産を食べると、アメリカ産のほうがだいぶあっさりとしている。粉の付き感もマレーシア産のほうがムラがないように思えた。
ポテチ一枚一枚の質の安定度はマレーシア産のほうがいいくらいかも。
だけど、それが美味しさに昇華できていない。個人的にはマレーシア産のほうが動物くさいというか、ちょっとした後味の悪さを感じる。単独で食べたときは気づかなかったんだけど、食べ比べると気になった。
アメリカ産のほうが粉感があって美味しいっていうのは想い出通り。でも、アメリカ産のほうがあっさりしてたのは意外だったな。そこは想い出補正だった。それに厚さがけっこう大事。厚いとわれわれが求めているプリングルズ感が失われてしまうのだ。
サワークリームオニオン味って粉が付いていれば付いているほど、そしてフレーバーが濃ければ濃いほど美味しく感じるのかと思っていたけど、アメリカ産プリングルズは想い出よりはあっさりしていた。ただ濃いだけではなかった。もちろんアメリカ産だってフレーバーは変化するだろうから、数年前とは違っている可能性はあるのだけれど。
まあ、そんなあれこれ考えなくてもいいか。自分の中ではアメリカ産のほうが美味しいっていう結論がはっきり出たのだから。我アメリカ産プリングルズサワークリームオニオン味が美味いと思う、故にアメリカ産プリングルズサワークリームオニオン味を選ぶ我在り。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
ちなみにポテチ入門書を書いたので、ご関心のある方は是非。
表紙とかもっとこだわるべきだったのでしょうが、ポテチについて最も体系的に整理された本だと自負しています(Kindle Unlimitedならタダです)。
↑ネコもアメリカ産へ向かう(塩分あるから食べさせないけど)
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フラ印のうすしお味を食べる
みんな大好き、私も大好き、フラ印のポテトチップス。フラダンサーがハワイの風と美味しさを届けてくれる。 生まれてはじめてフラ印を見たときは舶来品だと思ってた。
実際は日本のポテチ。今ではカルビー傘下のソシオ工房が製造しているが、もともとは我が国ポテチ元祖、濱田音四郎氏が興したアメリカンポテトチップ株式会社の製品だ。第2次大戦後、進駐軍の米兵から勧められたのがポテチ作り。進駐軍相手につくったポテチはバカ売れし、彼らが去ったのちはホテルやデパート等への地道な営業活動を続けやがてポテチが日本に浸透する。濱田氏はポテチの製造特許を取らず、ポテチ作りを習いに来る人にも対価をとらず製造方法を教えた、といういかにも昭和な義侠心あふれる人物であった。
濱田氏は、和歌山で網元をしていた父親の元で生まれ育つ。長じて船の乗組員となる。秩父丸というアメリカ行きの客船に船員として選ばれたが、中継地のハワイで現地に住む和歌山からの移住者との会話に花が咲き、気づけば出航時間が過ぎていて濱田氏はハワイに置いてけぼりとなった。次の船が1ヶ月後に来たものの、すでに代わりの船員が雇われていたこと、太平洋戦争前夜で日本の生活は苦しいためハワイに残った方がいいと説得されたことで、濱田氏はハワイに残った。しかし、すぐに真珠湾攻撃によって太平洋戦争が勃発、日本人である濱田氏は日系人の強制収容所に入られ、戦後になってようやく日本に帰国できた。
終戦直後の日本はとても貧しく濱田氏は栄養失調に悩まされたが、米国進駐軍が日本に到着すると通訳としてハワイ在住の日系二世が来日、その中には濱田氏の友人もいた。友人に誘われ東京に行き、進駐軍の米兵と交流を持つようになる。彼らから勧められたのがポテチの販売だった。
日本にはポテチがなかったため、濱田氏はハワイの友人からポテトチップス製造の機械を送ってもらい、市ヶ谷でポテチづくりを開始する。ポテチは進駐軍に大変人気で、5、6年は製造が間に合わないほどだったという。ただ、米軍が撤退すると新たな市場の開拓を迫られ、濱田氏は試食用のサンプルを持ってホテルのビアガーデンなどに盛んに売り込んだ。はじめは断れてばかりだったが、何回もチャレンジするうちにやがて取引してもらえるようになり、徐々にホテルやデパート、スーパーなどと取引が広がっていった。「これだけはやりとげてみせる」という濱田氏の意志の強さに感服するばかりである。
濱田氏のすごさは、ポテチの製造方法の特許を取得しなかったこと、そして製造方法を教えて欲しいという希望者に対価を取らずに製造方法を進んで教えたことにある。濱田氏がハワイに置き去りにされたことは前述のとおり。その秩父丸は戦争中に米国の魚雷攻撃を受けて沈没、乗員乗客は全員命を落とす。その意味で濱田氏は強運の持ち主といえるわけだが、彼はその経験から人間はまじめに生きるべきで、相手を不幸にするような生き方をしてはならないと考えるようになり、社会奉仕の心を忘れないように生きようと決めたのであった(拙著「ポテチの日本伝来〜濱田音四郎氏の功績〜」『ポテチ入門〜ポテトチップスを愛する人に捧げる書〜』
現在のポテチ市場は、カルビーのシェアが圧倒的、それに湖池屋と山芳が続く。1960年台後半まで遡ると、アメリカンポテトチップは、4パーセントのシェアがあった。それにしても、湖池屋以外は名前を今は聞かない。ポテチ市場も時代とともに大きく移り変わる。たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。
図表:1969年のポテチ市場マーケットシェア(%)
出所:拙著「ポテチの市場動向」『ポテチ入門〜ポテトチップスを愛する人に捧げる書〜』、元データは、富士経済『’70 食品マーケティング要覧 No.1 スナック食品市場の展望』1969年、142頁。
さて、ポテチを食べよう。
原材料は、こんなところ。原材料はカルビーのうすしお味と同じ。フラ印のうすしお味はもともとこの配合なのか、それともカルビーの子会社だから?パッケージは発売当初から変わっていないそうだけど。
ジャガイモ
植物油
食塩
こんぶエキスパウダー
調味料(アミノ酸等)
あっさりとした塩味の中にこんぶエキスパウダーの旨味がほんのり香る。カルビーや湖池屋のうすしお味に比べるとほんのわずか味付けが薄めのような気がする。だからだろう、170グラムの大容量サイズがあっという間に減っていく。読書しながら、映画見ながら、ゲームしながらぱくぱくつまんでいると、えっ、もう終わり?くらいぱくぱくいけちゃう。ぱりっとした食感といい、まさにうすしお味の王道中の王道。
フラ印の中で何が一番好き?と聞かれたら、ブルーのパッケージの「カイソルト」で、両者並べるとカイソルトに手が伸びることが多いのだが、なかなかどうして、ベーシックなうすしお味だって美味しい。
ハワイアンサワークリームもうまいが、カイソルトやうすしお味のほうがいいかな。フラ印を食べるなら。
170グラムと大容量サイズだし、よくあるスーパーには置かれていなくてディスカウントされていないことも多いから、一袋の値段は高いのだが、グラム単価だとコンビニの大手ポテチで大差ない。というかむしろ安いくらい。自分が買った成城石井だと税込で約280円。グラムあたり約1.65円。対して、コンビニポテチが85グラムで約150円。グラムあたり1.77円。
成城石井など、得てしてこだわりスーパーで見かけることが多いからか、実のところ値段的に大差ないのにフラ印はちょっと特別感がある。これはブランド化戦略として意図的にやっているのか、それとも生産力に限界があるか、単に広くマーケットに流通させられないだけなのか。その意図を私は知らないが、結果としてブランド力強化につながっているように思う。
うすしお味をペロリとたいらげ、フラ印の美味しさを改めて確信したのであった。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
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カルビーのコンソメWパンチを食べる
カルビーのコンソメパンチ
塩、のり塩、コンソメ。ポテチのフレーバーでまっさきに思い浮かぶのがこの3つだろう。
その一角を占めるコンソメといえば、カルビーのコンソメパンチ。多くのポテチメーカーがコンソメ味をつくっているが、コンソメといえばカルビーのコンソメパンチの印象が最も強いんじゃないだろうか。カルビーがうすしお味によってポテチ市場に参入したのが1975年。翌年ののりしお、そして1978年にコンソメパンチを発売。
商品名は当時の流行語「パンチがきいている」が由来になっており、「パンチ」は”元気のよい””勢いのある”という意味で使われていました。強く印象の残る新商品を発売したいという想いから「コンソメパンチ」と名付けられました。
特にコンソメパンチは爆発的なヒットになったらしい。そういえば、2018年はコンソメパンチ誕生から40年の節目だったんだな。まったく気がついていなかった。迂闊だった。
コンソメWパンチを食べる
光り輝く金色のコンソメWパンチのパッケージ。その金色のパッケージを開封すると、中から薄くスライスされ琥珀色のパウダーをまとった美しい姿が現れる。風味豊かな香りが鼻を刺激し、食欲を促す。私の中に存在する食欲を抑える理性がこの時点で跡形もなく破壊される。コンソメパンチ免疫なんてない。何度見ても、何度パッケージを開けても、何度食べても、コンソメパンチの伸びる手を止めることはできない。私の視界に映るのは琥珀色の美しいポテチのみ。
原料は、こんな感じ。
- ジャガイモ
- 植物油
- チキンコンソメパウダー
- 砂糖
- 食塩
- でん粉
- 粉末しょうゆ
- 粉末ソース
- 香辛料
- たまねぎエキスパウダー
- ビーフコンソメパウダー
- 粉末植物油脂
- ミルポワパウダー
- 野菜パウダー(トマト、にんじん)
- トマトエキスパウダー
- 香味チキンオイル
- 梅肉パウダー
- 調味料(アミノ酸等)
- 香料(ごまを含む)
- カラメル色素
- 酸味料
- パプリカ色素
- 甘味料(ステビア)
- 香辛料抽出物
- ベニコウジ色素
健康狂いの人なら卒倒しそうなほどいろいろなものが入っているが、私などはこれを見ると開発者たちの試行錯誤と努力の跡を辿るような気がして楽しい。この組み合わせを編み出した職人芸にただただ関心するばかりだ。
ちなみに、見慣れない「ミルポワパウダー」とは、ミルポワ(たまねぎ、にんじん、セロリ)、にんにく、パセリなどをバターと白ワインと一緒に煮出したものをパウダー状にしたものだ*1。
ただでさえ美味しいコンソメパンチ。そのコンソメ風味が2倍なのだ。美味しくないはずがない。ただ、コンソメWパンチはコンビニ限定発売なのだが、最近はコンビニでポテチを買うことが多くて、コンソメ味もコンソメWパンチが自分の中ではデフォになっていて、オリジナルのコンソメパンチとこのコンソメWパンチのどちらが通常なのかがもはやわからなくっている。
Wパンチが普通になっているから、コンソメ風味が2倍なのかどうかはもはや判別不能なんだが、そんなことはお構いなしに相変わらずこのコンソメ味っていうのは美味しいんだな。
うすしおやのり塩に比べると複雑な味がする。そもそもコンソメはブイヨン(牛肉、鶏肉、魚などからとった出汁)に肉や野菜を加えて煮立てたもの。どこでコンソメスープを頼んでも、琥珀色の透き通ったスープが供されるわけだが、なんでもコンソメは濁っていてはいけないらしい。普通にこれらの材料を煮出せば相当にアクが出るはずだから、透き通ったコンソメスープを作るには相当な手間ひまがかかるのだろうな。
様々な材料が昇華された総和がコンソメ。各素材の痕跡を探すのは難しい。だから、コンソメ味はコンソメ味としか言いようがなくて、だからこそコンソメパンチ味はコンソメパンチ味としか言いようのない、オリジナルな味なのだ。誰が世界ではじめてコンソメ味ポテチを発明したかは知らないが、天才的なひらめきとしか言いようがない。出てくるのは賞賛の言葉のみ。
あっという間に完食。日々新しいポテチが世に送り出されているが、定番味の安定感は抜群だ。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
ちなみにポテチ入門書を書いたので、ご関心のある方は是非。
表紙とかもっとこだわるべきだったのでしょうが、ポテチについて最も体系的に整理された本だと自負しています(Kindle Unlimitedならタダです)。
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カルビーのポテリッチのり塩バター味を食べる
アドラー心理学
アドラー心理学をもとにした『嫌われる勇気』で一躍有名になった岸見一郎氏はこう言う。
毎日を同じことの単なる繰り返しとは思わず、たとえ日々の生活のルーティンがほぼ決まっている人生ではあっても、今日という一日が決して昨日とは同じではないと思えれば、たしかに人生は、違ったふうに見えてくる。
そのような気持ちで始めた一日は、明日を待たずに完成している。その日が充実していれば、今日やり残したことに注意は向かなくなるものだ。そのように考えて生きれば、気がつけば長く生きたと思える日が、いつかくるかもしれないし、あるいはそんな日は永久にこないのかもしれない。しかし、それは結果であって、長く生きること自体は生きることの目標にはなり得ない。
現にささやかな幸福を実感している人であっても、こんな幸福がいつまで続くのだろうかと怖れ、いつ何時幸福が失われるかと思うと怖くなり、そんなささやかな幸福ですら感じてはいけないと思ってしまう。
この場合も、怖れから脱却するためには、今のこの幸福が持続するかどうかなどと考えないことが肝要だ。明日も幸福が持続するかどうかはわからない。どうなるかわからないとしても、今ここで感じている幸福には意味があるのだ。そもそも、こないかもしれない明日に賭けることはできないのだ(岸見、下記書、208-209頁)。
ポテチは健康に悪影響を与える食品の代名詞ともいえる存在である。私はこよなくポテチを愛するが、世の中の少なくない人からポテチを含むスナック菓子が敵視されていることは知っているし、私も健康を気にする人に無理にポテチをすすめようとは思わない。
今のところ私の人間ドックの成績は抜群によいが(血圧だけ低くてC評価になる)、いつ何時健康を害するかわからないし、もしかしたらもっと健康を考えてポテチを控えるべきだったと後悔する日がくるかもしれない。
しかし、だからといってそうなるかどうかわからない未来に憂いて好きなものを食べられない人生に何の意味があるだろうか。人間は健康になるために、長生きするために、この世に生を享けるのではない。どうなるかわからない未来に憂いて今目の前にある幸福を感じることに遠慮する必要はないのだ。今ある幸福を誰にも遠慮せずに感じること。それこそが自分の人生を意義あるものする唯一の方法であろう。
だから、私は今日もポテチの袋を開封する。もちろん、岸見氏がそんなことを正当化するためにその本を書いたわけでないことを心のどこかで感じながら。。。
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カルビーのポテリッチのり塩バター味を食べる
のり塩withバターとは幸福の香りしかしない。まさにキラーコンテンツ、最強タッグここに誕生である。両方とも定番のフレーバーながら、そう言われてみればのりバター味はお目にかかった記憶がない。新商品ではあるが、定番になってもおかしくないフレーバーの組み合わせだ。
見た目は、通常ののり塩ほどがっつりのりが付いていないように見える。
原材料は下記のとおり。カルビーに限らずバター味だとだいたい砂糖が入っている。バターの持つ甘みを演出するうえで砂糖は大事な演者なのだ。
ジャガイモ
植物油
砂糖
食塩
たん白加水分解物(大豆を含む)
でん粉
ホエイ
青のり
粉末しょうゆ(小麦を含む)
クリーム風味パウダー
焼き海苔
ガーリックパウダー
バターパウダー
調味料(アミノ酸等)
香料
甘味料(ステビア)
さて、実際に食べてみると、思いのほかのり塩の存在感が薄い。目隠しされたらバター味と答えてしまうかもしれない。よーく味わっているとじわりじわりとのりの存在を感じ取れるようになる。もう少しのりが強いほうがのり塩バター感が出るような気もするし、バターの存在感の強さにのりが食われてしまったか。最強タッグのはずが個性の強い者同士、互いの活かし方に苦慮したか。それとも案外のりをこれ以上強くするとバランスが悪かったか。
カルビーが新たなフレーバーの開発までに何通り調味料の組み合わせを試すかは知らない。しかし、ライバル会社の湖池屋は新商品開発に数十種類の組み合わせを試すそうだ(数十種類で済むのは長年の経験の蓄積があるから。ちなみにこだわりのプライドポテトの開発時は300種類程度試した*1。
カルビーだって湖池屋に劣らないか、もしかしたらもっと試しているかもしれない。となれば、のりが濃いバージョンも試したはずで、そのうえで店頭に並ぶ今の味に行き着いたわけで、今以上にのり風味が強いと美味しくないと判断された可能性は否定できない。
まあ、ああだこうだ言ったが、のり+バターなのだ。マズイはずがない。のり塩バター味も美味しくいただいた。
ごちそうさま。次は何味を食べようか。
ちなみにポテチ入門書を書いたので、ご関心のある方は是非。
表紙とかもっとこだわるべきだったのでしょうが、ポテチについて最も体系的に整理された本だと自負しています(Kindle Unlimitedならタダです)。